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大阪地方裁判所 平成3年(わ)3300号 判決 1992年8月25日

本店所在地

大阪市西成区千本南二丁目二番八号

新大阪工業株式会社

(右代表者代表取締役 西彦)

本籍

大阪市北区堂山町七番地

住居

同市西成区千本南二丁目二番八号

会社役員

西彦

昭和一〇年一月八日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官立石英生出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人新大阪工業株式会社を罰金二五〇〇万円に、被告人西彦を懲役一年二月にそれぞれ処する。

被告人西彦に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人新大阪工業株式会社(以下、「被告会社」という)は、大阪市西成区千本南二丁目二番八号に本店を置き、杭打基礎工事全般等を目的とする法人であり、被告人西彦(以下、「被告人」という)は、被告会社の代表取締役で、業務全般を統括していた者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、

第一  昭和六二年七月一日から昭和六三年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が別紙修正貸借対照表(一)記載のとおり九八四四万三七五一円であったのに、売上の一部を除外するなどの不正の方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和六三年八月二四日、大阪市西成区千本中一丁目三番四号所在の所轄西成税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一八四三万二〇八三円で、これに対する法人税額が三七四万〇六〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額三八三八万二七〇〇円と右申告税額との差額三四六四万二一〇〇円を免れ、

第二  昭和六三年七月一日から平成元年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が別紙修正貸借対照表(二)記載のとおり七六一六万一〇三五円であったのに、前同様の不正の方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成元年八月二九日、前記の所轄西成税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三四三五万九六一三円で、これに対する法人税額が一一九一万四〇〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額二九六三万六六〇〇円と右申告税額との差額一七七二万二六〇〇円を免れ、

第三  平成元年七月一日から平成二年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が別紙修正貸借対照表(三)記載のとおり二億五〇一八万四三三四円であったのに、前同様の不正の方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成二年八月二七日、前記の所轄西成税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が九五七三万六八三九円で、これに対する法人税額が三五五一万五八〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額九七二八万五七〇〇円と右申告税額との差額六一七六万九九〇〇円を免れた。

(証拠の標目)

注・証拠末尾の括弧内の漢数字は、証拠に付された検察官請求番号を示している。

判示事実全部について

一  被告会社代表者被告人の公判供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通(八七ないし九一)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書三二通(五五ないし八六)

一  中村隆次の検察官に対する供述調書二通(五一、五二)

一  伊田富久子の検察官に対する供述調書(五三)

一  西慶子の大蔵事務官に対する質問てん末書五通(四六ないし五〇)

一  寺崎寧の大蔵事務官に対する質問てん末書(五四)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二五通(一二ないし一六、一八ないし三二、三五、三七、四二ないし四四)

一  大阪法務局登記官認証の登記簿謄本(九二)(但し、被告会社関係のみで)

一  被告会社代表者作成の証明書(九三)(但し、被告会社関係のみで)

一  検察官事務官作成の捜査報告書(一〇)

一  大蔵事務官作成の証明書(一一)

判示第一及び第二の各事実について

一  大蔵事務官作成の証明書二通(六、七)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書二通(四、五)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(一)

判示第二及び第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(八)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書六通(三三、三八ないし四一、四五)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(二)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(九)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書三通(一七、三四、三六)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(三)

(法令の適用)

罰条

被告会社 判示各罪についていずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(いずれも罰金は情状により免れた法人税額に相当する金額以下)

被告人 判示各罪についていずれも法人税法一五九条一項

刑種の選択 被告人の判示各罪についていずれも所定刑中懲役刑を選択

併合罪の処理

被告会社 刑法四五条前段、四八条二項(判示各罪の罰金額を合算)

被告人 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

主刑 被告会社を罰金二五〇〇万円、被告人を懲役一年二月

刑の執行猶予 刑法二五条一項(被告人に対し三年間猶予)

(量刑の理由)

本件は、被告会社の代表取締役として業務全般を統括していた被告人が、昭和六二年七月から平成二年六月までの三事業年度に合計四億二四七八万円余の所得がありながら、売上の一部を除外するなどの不正の行為により、右所得のうち二億七六二六万円余を隠して申告し、合計一億一四一三万円余の法人税を脱税した事案であり、脱税額は多額で、ほ脱率も約六九パーセントと低くない。そして、脱税の手口自体は巧妙とまではいえず、動機も、建築基礎工事業を営む被告会社が建築業界で後発の下請企業であり、受注確保のための接待、交際費や元請から負担を求められる人身事故の補償費等、あるいは、不況時の資金に充てるなどの裏金の捻出が必要であったとはするものの、そのようなことは本来被告会社において正当な企業努力により対処すべき事柄であるとともに、留保した所得中には株式取得や旅行代金等の家族らを含めた被告人の個人的用途に充てられたものも相当額あるなど、必ずしも犯情はよくなく、被告会社及び被告人の刑責は決して軽くない。

しかし、被告人は、事件発覚後事実関係を認めて、本件を反省しており、また、被告会社においては、本税、附帯税等のすべての納付を終えていること、さらに、被告人にはこれまで一般前科はなく、個人企業に始まって被告会社を設立し、事業の発展、拡大に尽力してきたことも認められることなど、被告人らのために考慮すべき事情も少なくない。

そこで、以上のほか、諸般の事情を総合考慮して、被告会社及び被告人をそれぞれ主文掲記の刑に処したうえ、被告人に対してはその刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 竹田隆)

修正貸借対照表(一)

<省略>

修正貸借対照表(二)

<省略>

修正貸借対照表(三)

<省略>

税額計算書

<省略>

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